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サッカー少年のためのスポーツ医学

サッカー少年のためのスポーツ医学

【このコーナーができたわけ】

小学校5年から6年生のサッカー少年(少女)の膝の痛みの原因として一番多いのがオスグッド-シュラッター病(以下オスグッド病と呼びます)です。

サッカー少年のためのスポーツ医学 脛骨粗面の場所
症状としては、サッカープレー中や、プレー後に膝関節のすぐ下の骨の部分(写真1・クリックで拡大します)に痛みを感じます。最初のころは運動したときだけ痛みを感じますが、安静にしていると痛みはありません。

そのまま練習や試合を激しく続けていると、痛みはだんだん強くなり、やがて安静にしていても痛みを感じるようになります。

オスグッド病は心配な病気ではありません。早いうちに対策をとれば、後遺症を残さずに完全に治癒しますし、シーズンを棒に振ったり将来サッカーができなくなるようなこともありません。

しかし痛みがあるのに、無理をして練習や試合を続けると、症状が悪化して大人になっても正座ができなくなったり、サッカーを続けることができなくなることだってあるのです。

つまりオスグッド病の正しい知識をもてば、発症を予防することもできるし、発症したとしても、早いうちにまた練習に復帰することができるのです。コーチだけでなく御両親もオスグッド病について知っていただき、大切なお子さんの個性を伸ばし、生涯にわたってサッカーを楽しめるようにご配慮いただけることを願ってこのコーナーをつくりました。

オスグッド病に関する最新の知識を公開します。

【Osgood-Schlatter病の歴史】

はじめてこの病気が報告されたのは今からおよそ100年前の1903年のことです。

丁度そのころレントゲン写真が医療で使われ始め、米国ハーバード大学にいたOsgood先生はレントゲン写真を使って骨の病気を研究するうちに、この病気の存在に気づき報告をしました。同じ頃ハーバード大のSchlatter先生も同様の報告をしたので、Osgood-Schlatter病と呼ばれるようになったのです。

100年の間に科学・医療技術は大きく進歩しました。しかしオスグッド・シュラッター病に関しては、診断も治療も100年前と基本的に変わっていません。つまり症状と診察でおよそ診断がついてしまい、安静にしていれば自然に良くなってしまう、という点において変わらないということです。


【Osgood-Schlatter病はどんなときおきるの?】

オスグッド病は小中学生サッカー選手の20~30%にみられるという報告もあります。宮崎県サッカー協会に登録した小学生20チーム442名中、4%にオスグッド病がみられました。

急に身長が伸びる10歳から15歳の間に発症するのです。サッカーの場合、蹴り足でなく軸足の方が多いのですが、両足に発症することが全体の1/4くらいにあります。男子の方が多いのですが、最近は女子も運動するようになったので女子のオスグッド病も増えているようです。

サッカーやバレーボール、バスケットボールなどジャンプやダッシュが多いスポーツ選手によくみられますが、スポーツをとくにやっていない子もオスグッド病になることはあります。


【Osgood-Schlatte病はなぜおきるの?】

まず骨の成長のしくみをお話します。(右の図をクリックすると拡大します)
サッカー少年のためのスポーツ医学 脛骨粗面の骨化過程
図1にあるとおり、11歳頃から脛骨粗面とよばれる部分に骨の成長の「核」ができて、それが上から降りてきた成長の核とくっついて骨端線をつくります。この骨端線で骨がつくられて足の骨が伸びてゆき、背が伸びてゆくわけです。

オスグッド病のメカニズムを説明しましょう。丁度脛骨粗面(図1のaの部分)に大腿四頭筋の腱がくっついています。みるからに11歳頃の脛骨粗面って脆そうですよね。しかも急に骨が成長して伸びたとき、筋肉が伸びるのが間に合わず脛骨粗面はいつも四頭筋腱にひっぱられた状態になります。

このときサッカーで強い衝撃がかかりつづけると、この部分が少しずつはがされるように壊れてゆくことでオスグッド病になるのです。軸足に多いのは軸足がストップ動作やジャンプ動作のときにこの部分が強い衝撃を受けやすいからです。


【Osgood-Schlatter病になるとどうなるの?】

最初はプレー中やプレー後の膝の不快感を感じます。膝を曲げた状態で脛骨粗面を押すと痛みを感じます(写真2・右の写真をクリックすると拡大します)。
サッカー少年のためのスポーツ医学 脛骨粗面を押して痛みがあるかどうか
腫れて少し熱っぽく感じることもありますが、赤くなることはめったにありません。

初期のうちは特にジャンプの着地時のみ痛んだり正座時に痛むだけですが、進行すれば階段の昇り降りにも痛みを感じるようになり、さらに悪くなると安静にしていても痛みを感じるようになります。

検査をすると、はじめの頃はわずかに脛骨粗面の骨化中心(成長を担う部分)に亀裂が生じてみえます。この段階で安静などの治療を行えばオスグッド病は完全に治癒し、将来にも症状は残りませんし、機能障害も残りません。

オスグッド病が進行すると、骨化中心に生じた亀裂が分離して、小さな骨片のようになってしまいます。その後この骨辺はもとの骨にくっついて治ることもありますが、治らずに靭帯の中に残ってしまうこともあります。残った場合は、押すと痛い、ひざまずけない、正座できない、などの症状が大人になっても残ることがあります。

骨の急な成長が止まれば、オスグッド病は治ります。つまりオスグッド病は成長期の子供の病気で成人は発症しません。

基本的にはオスグッド病は良性の病気です。骨の成長がオスグッド病のために妨げられることはありません。つまりオスグッド病になったから背が伸びない、ということはありません。また関節の機能も保たれます。オスグッド病を経験したために大人になって歩行に障害がでることはありません。

しかし痛みはつらいものです。プレーするたびに痛みを感じていては良いプレーはできません。適切な対応をしないとサッカーが続けられないことはありうるのです。


【Osgood-Schlatter病はどうやって診断するの?】

「サッカーをやっていて膝が痛くなったからオスグッド病だ!」と早まってはいけません。

確かにオスグッド病はサッカーで一番多い膝の障害ですが、ジャンパー膝(ジャンプする競技でよくみられる膝の靭帯炎、Sinding-Larsen-Johansson病を含む)、有痛性分裂膝蓋骨、ランナー膝などのスポーツによる「使い過ぎ症候群」のほかに、プレーによる怪我(半月版損傷、靭帯損傷)なのかもしれません。

極くまれではありますが、内科的な病気がもとで膝が痛んでいることもあります。基本的にはチームドクターに相談してください。

しかし以下がすべてあてはまる場合はオスグッド病が強く疑われます
1. 身長が一ヶ月で1cm以上延びる急速成長期である
2. 運動時のみの痛みが、徐々にはじまっている(プレー中の怪我と関係がない)
3. 脛骨粗面を押すと痛いが、他の部分には痛みが無い

初期のうちであれば診断はこれだけでも十分だと思います。
症状が強い時期には膝関節を曲げた位置から膝を伸展させるときに、足首を抑えると脛骨粗面部に痛みがでる(抵抗伸展時疼痛テスト)も有用です。

きちんと診断を確定するためには、レントゲンは必ず調べますが、MRI検査が一番役にたちます。MRIをみることで、オスグッド病がどこまで進行しているのかもよくわかるからです。

プレーしていても特別痛くはないけど、脛骨租面を押さえると痛い、くらいであれば検査は不要でオスグッド病のごく初期と考えて対策を講じればよいでしょう。
痛みのために日常に少しでも障害がでているようなら検査をうけるべきだと思います。


【Osgood-Schlatter病はどんな子がなり易いの?】

Osgood-Schlatter病になりやすい原因について、膝蓋骨の位置異常、骨の並び方のずれ(アライメント異常)などが指摘されてきましたが、最近では否定されているようです。

つまりオスグッド病になりやすい骨格があるわけではありません。
しかし大腿四頭筋の緊張が高いことは発症と関連します。

尻上がり現象(図4)陽性なら注意すべきでしょう。骨の成長速度が速いときに、大腿四頭筋がひっぱられて緊張が高まることから、成長速度が速いときも注意が必要といえます。


【Osgood-Schlatter病の治療はどうするの?】

少しでもオスグッド病を疑ったら、まずは安静が第一です。

試合はもちろんのこと、急加速、急停止をともなうような運動、すなわち脛骨粗面に負荷がかかるような運動を完全に止めることです。亀裂が入った骨化中心が回復するのを待たなくてはなりません。日常生活はそのまま普通におこなってかまいませんが、ダッシュとジャンプは禁止です。

安静時痛がなければ、ストレッチングが有効です。大腿四頭筋のストレッチ自体が治療効果を持つとされます。方法を(写真3)に示します。(クリックすると拡大します。)
サッカー少年のためのスポーツ医学 大腿四頭筋のストレッチ
いきおいをつけてやってはいけません、かるくつっぱって「痛み」の一歩手前くらいで止めて、ゆっくりと息を吐きながら20秒~30秒間伸ばすストレッチをおこないます。

多くの研究がオスグッド病の子の大腿四頭筋が強い緊張を示していることを指摘しており、これがオスグッド病の結果ではなく原因に関与していることを示唆する報告もあります。正しいストレッチをじっくりと行うことは重要な治療のひとつです。

脛骨粗面のアイシングは有効です。20分のアイシングを1日2~3回やるとよいです。

消炎鎮痛剤の内服が痛みを抑えるだけでなく、脛骨粗面の炎症を直接抑制するという報告もある一方で、消炎鎮痛剤は有効ではなかったという報告もあります。内服は胃炎・胃潰瘍のリスクを伴いますので、脛骨粗面に直接塗るかたちが良いでしょう。

安静時痛がなく、運動時痛も減ってきたら、大腿四頭筋の筋力増加訓練をおこないます。
オスグッド病に対して安全な筋力トレーニングの方法については現在文献を入手中で、文献をそろえてから報告します。

運動時の痛みが強く、階段歩行も難しいようなときは、松葉杖を使ったり、膝をブレースで固定補強したりします。
そもそも、これほど症状を悪化させてしまった時点で治療の失敗といってよく、現実にはより早い段階での治療が必要です。最近では膝のブレースは四頭筋の萎縮をきたすためあまり使わなくなっているようです。
オスグッドバンドといって、脛骨粗面にマジックテープのベルトを巻くことで大腿四頭筋の付着部にかかる圧を分散する、という方法もあります。

昔はオスグッド病に対し「ドリリング」といって脛骨粗面に孔をあける手術がおこなわれましたが、最近では行いません。オスグッド病が進行して靭帯のなかに骨片を発生させそれが残ってしまい痛みが続く原因になっているとき、痛みを取り除く目的で手術がおこなわれることがあります。

遊離骨片が生じた場合、2ヶ月の安静でも痛みがとれないときは骨片摘出手術を検討すべき、とする報告もあります。


【どのくらいの期間安静にしていれば良いの?】

発症初期であっても最低2週間は試合はもちろん、通常の練習も休んでください。

安静時痛があるうちは、リハビリは開始できません。運動時痛のみなら、ストレッチや筋力強化運動をあわせて行い復帰を早めることが可能です。

通常は4~6週間休めば完全復帰が可能です。ただしこれは一律に決まった期間ではなく、個人の状態にあわせて判断してゆくべきでしょう。コーチやチームドクターと相談しながら安静期間、リハビリ期間とリハビリプログラム、そして完全復帰を計画してゆきましょう。


【Osgood-Schlattera病はどうやって予防すればよいの?】

コーチおよびチームドクターは以下に注意すべきです。

1. 身長が毎月1cm以上伸びだした子は注意する。
2. 大腿四頭筋の柔軟性が低い子は注意する。

※ 「注意する」とは練習後や試合後に膝の不快感や、脛骨粗面に圧痛(押さえると痛いこと)がないことを確認する、ということです。


オスグッド病の予防として

1. 練習・試合の前だけでなく後にも大腿四頭筋のストレッチングをすること
  サッカー少年のスポーツ障害でオスグッド病とならんで多いものとして腰痛があります。
  腰痛も 「からだの硬さ」と関連があるとされており、ストレッチを積極的におこなうことで
  腰痛を予防できる可能性があります。
2. 大腿四頭筋の筋力強化をおこなうこと
3. 脛骨粗面に不快感を訴える子は、練習メニューを変えたり、試合出場を見合わせたり、
  出場時間を減らしたり等、負荷の軽減を考えること
4. 脛骨粗面に不快感を訴える子は、運動後の脛骨粗面に対するアイシングをおこなうこと
5. コーチ、ドクター、親は子が発達途中であることを考えて長期的視野にたってプランを組むこと

※ パワー、持久力のトレーニングをすべき時期ではありません。敏捷性、巧緻性といった 「神経系」が発達する「ゴールデンピリオド」なのです。


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